職人の町のショップギャラリー

冬のような日と
春のような日が
交互に来ていた、
2月のとある寒い日。

「味噌仕込みをするけど来ない?」
とお誘いを受けました。

梅雨のころ、梅仕事を
教えてくださった箭原さんのお宅へ。

今度は冬の手仕事を教わりに行ってきました。

味噌を仕込む前の下準備として、
麹を掌でこすりあわせてほぐし、
また、大豆をたっぷりの水に浸して
2日間おいておきます。

当日は、大豆を3段の蒸し器で
1時間ほど蒸したところから始まりました。

蒸し器1段ぶんをひと工程として
味噌を仕込んでいきます。

そのひと工程の分量はこちら:
大豆 1.5kg(水に浸す前)
麹 3枚(約950g/枚)
塩 800g

「麹は、大豆の重さのだいたい倍くらいの量ね。

本当は2枚でも4枚でもいいの。

でも2枚と3枚だと全然味が違うけど
3枚と4枚は、そこまで違わないから」

しゅんしゅんと蒸し器から湯気が噴き出してきたら
1番下の段の大豆から取り出していきます。

蓋を開けた瞬間、もわっと上がる湯気に
視界を遮られながら、蒸した大豆をつぶし、
人肌くらいに冷まします。

つぶすときにコロンと飛び出した大豆を
つまみ食いしたら、何もつけていないのに
ほんのり甘くておいしい。

ちなみに、この大豆も箭原さんが育てたもの。

桶に麹と塩を合わせてなじませたら
そこにつぶした大豆を入れ、
すべての材料を合わせていきます。

「下からすくうように、しっかりまぜてね」

まぜながら、沸かした水を少しずつ注ぎ入れます。

水は、井波の山手に流れる不動滝の湧き水。
箭原さん自ら汲みに行ったそう。

すべての材料がよくなじんだら
両手で大きなボールをつくり
容器の中に、えいっと投げ入れます。

投げるのは、空気を抜くため。
しっかり空気を抜かないと、
そこからカビが生えてしまうそう。

「日頃のストレス発散に
力いっぱい投げたらいいのよ」
と箭原さんは笑いながら言います。

ひと桶ぶん全てと、
カビ予防のための唐辛子も忘れずに入れて、
ここまでがひと工程。

もちろんこれで終わりではありません。
蒸されるのを待っている大豆も、
麹も、塩も、まだまだあります。

もう一度、蒸した大豆をつぶすところから
再スタート。

容器をいっぱいにするには、
この一巡をあと10回以上は繰り返します。

人手も体力も必要な重労働。
でも、今日1日がんばって
あとは夏になるころまで待てば
おいしい味噌の出来上がり。

実は、昨年夏に梅干しを仕込んだときに
一昨年、箭原さんがつくった味噌をいただきました。
米麹の粒が残る、ほんのり甘い味噌は
夏野菜にそのままつけると
いつまでも飽きずに食べてしまいました。

手前味噌という言葉は、
昔、味噌は自家製で仕込み、
それぞれ自分のつくった味噌を
自慢し合ったことから転じて
「自分で自分や身内を褒めること」
という意味の言葉になったといいます。

確かに褒めたくなるよなあと
味噌をつけたキュウリをかじりながら、
夏に何度も思いました。

完成したものだけでなく
つくる過程も知ったことで
今年はより一層、おいしく感じられるかも。

季節を楽しむ暮らし方、
またひとつ覚えました。

文:松倉奈弓
写真:大木賢

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