職人の町のショップギャラリー

松竹梅。
おめでたい場面でよく用いられるこの組み合わせは、
井波彫刻でも、欄間のモチーフによく用いられます。

常緑樹である松は、冬の寒い季節でも
葉を青く茂らせ、樹齢も長いことから
「長寿」の象徴として。

竹は、地下に茎や根を張り巡らせ
さらに地表では上にぐんぐんと
まっすぐのびていくことから、
「子孫繁栄」や「成長」の意味。

そして、寒さの中でも花を咲かせ
最初に春を知らせてくれる梅は
「生命力」や「華やかさ」を表します。

古くから縁起物とされている、この三種の植物。

今までの松竹梅のイメージとは
ちょっと異なる作品を制作された
木彫刻家、前川 大地さんに
お話を伺いました。

「今までだったら欄間をはじめ、
パネルや衝立などにしていたものを
別の形として表現する、ひとつの
新しいアイディアとして考えました」

その発端は、井波にある一棟貸しの宿
Bed and Craft “KIN-NAKA”の
一室から見える、庭の松の木から。

大地さんはKIN-NAKAの担当作家として、
その建物内のあちこちに、彫刻を始め
井波を感じられる作品を展開しています。

「設計を担当した、建築家の山川 智嗣さんより
部屋に窓をつけるから何か意匠を、と提案を
受けました。その窓から松の木が見えると
聞いたので、それを借景にしよう、と。

松から派生して、松竹梅っていうモチーフの話になり、
じゃあ建築の中に落とし込んだらどうなるのか。

室内装飾としての、ひとつの提案です」

まず、ぱっと目を引くのは梅の花。

すべて咲いてしまうと、
あとはもう散りゆくだけだから
梅の蕾は「これから咲いていく」という
吉祥のあらわれ。

視線を横にずらすと、
思わず開けてみたくなる扉の
取っ手に松葉と松ぼっくり。

扉の向こうには、最初の着想を得たという
松の木が生えているのが見えます。

梅、松、と来ると、あともうひとつと
竹を探してしまうのは、松竹梅という
三つで一括りのイメージが
染みついているのかもしれません。

竹は、ぐるりと見回して
探してしまうほど、この空間に
しっくり馴染んでいます。

「正直なところ、このモチーフに対して
特別な意図や狙いはないんです。

でも、井波ではずっと昔から
木彫の題材としてあったものを
『こうしたらどう?』と
今までとは別の形で何かできないかと
デザインしました」

そのKIN-NAKAに関連する作品として
制作したのが、和の雰囲気の作品と、
松と梅の枝と、竹の葉とを束ねた
スワッグの形をした作品。

どちらも作品の背面には磁石が埋め込まれており
平らで円い画鋲をひとつ壁に刺して
その磁石と併せると、簡単に作品を設置できます。

水引をきゅっと結んだら、
お正月を迎えるのにもぴったりな
松竹梅の壁飾り。

門松やしめ縄も、つくることも飾ることも
少なくなってきて、さっと誂えることができるのは
今の時代にぴったりなのかもしれません。

スワッグのほうは、松竹梅の組み合わせと
言われないと気づかないほど。
現代の住宅の壁にも、どの季節にも
すっと馴染みそう。

スワッグは、雑誌の写真やお店で
見たものから着想を得たそうです。

こうしたデザインは表現力やセンスが
求められるようにも思えますが、
デザインはスキル、と
大地さんは言い切ります。

突き詰めれば、センスも関係あるとは
思うけど、と前置きしたうえで、こう続けます。

「思い描くイメージを再現するためには、
技術の蓄積が必要。

技術力と、こんなものを作りたいっていう
バランスが合うのに大体10年くらいかかったかな」

また、白木のまま仕上げることが多い
井波彫刻の中で、大地さんが作品に
彩色することになったきっかけを尋ねました。

「完成した作品には普通、
色を塗るんじゃないかなと思って。

井波にいるから、色をつけずに白木のまま
という方向に思考が行くけれど、
自分の中では、彩色は自然なことだった」

井波で生まれ育ち、お父様も彫刻家という
ルーツを持つ大地さんがこう答えるのは
少し意外な気もしましたが、
大学進学時に井波を出て、その後ドイツ、
東京での滞在を経て井波に帰ってきた経験から
そう思うようになったそう。

ただ着色するだけでなく、膠や漆も使ったり
さらにワイヤーブラシを使ってゴシゴシこすったり。

経年変化を感じさせるような古色仕上げ。

「何百年という年月を、こうしてぎゅっと縮めるんですよ」
といたずらっぽく笑います。

古典的なモチーフは、井波彫刻の文脈を
引き継いで制作していると話す大地さん。

「松竹梅に限らずですが、
今まであったモチーフであれば
井波で彫刻をやっている方々全員が
つくることができます。

自分は、その表現方法の出口というか、
最終形態を変えているだけですね。

欄間でもなく、ガラスケースの
パネルに入っているわけでもなく」

開くのを待っている梅の蕾のように
井波彫刻の新たな芽吹きも
きっと、すぐそこまで来ています。

文:松倉奈弓
写真:大木賢

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