職人の町のショップギャラリー

井波のまちの中心から
少し離れた、山野地域。

散居村と呼ばれる、農村風景が広がる地域で
ねっとりとした甘味がおいしい、里芋が特産品。

里芋名人と呼ばれる、
杉森 桂子さんにお話を伺いました。

里芋の収穫は、秋も深まり、
朝晩の気温がだいぶ下がるころ。

今年は11月上旬に収穫が始まりました。
例年、1週間から10日ほどかけて収穫されます。

収穫の作業は、まず葉と茎を刈り取ったら、
土の中に埋まっている里芋を掘り起こします。

杉森さんの運転する機械のうしろには
土から出てきた里芋の株がごろごろと並びます。

「ひと株になる里芋の数は、大体15~20個ほど。
出荷するもの以外は、株のまま保存し
次の年の種芋にするんです。
来春、大体3月くらいに株をくずして
5月くらいに植えますね」

株ごと保存すると、里芋もきれいで新鮮なまま。
今は、農協の倉庫に移して保存しているそうですが
昔は田んぼの真ん中に集めて冬を越させていたそう。

「昔といっても、10年ほど前ですね。
その頃までは、株をすべて田んぼに寄せて、
山にして、もみがらをかぶせて。

そうやって保存しているのは
今はもう2、3軒ほどになってしまいましたが、
『土(ど)まんじゅう』、
またの名を『芋にょう』と呼んで、
この地域の冬の風物詩だったんですよ。

冬になると雪が降るでしょう。
そうすると、ぼこっとまあるくなるから
里芋の土まんじゅうよ」

ここ山野地域が、里芋づくりに
適していると言われるのは、
近くを流れる庄川の扇状地としてできた
表面が泥土、下は砂地の土壌だからだと
杉森さんは話します。

「この家の向こうのほうまで庄川が流れ
そこを主流に、無数に小さい川が
小矢部川のほうまで流れていました。

庄川が氾濫すると、土砂が堆積していき
できたのがこの土壌。

化学肥料を使わずに
米ぬかや、昔なら藁を入れたり、
土地を痩せさせないつくり方をしていることも
もちろんありますが、やっぱり最初の土壌が
よかったんじゃないかな。

ここから2~3キロ離れてしまうと
もうこの里芋の味にはなりませんね」

扇状地とは、山を流れる河川が平地に出たときに
土砂などが堆積してできる、扇型の地形のこと。

ここ山野地域は、その扇の形が始まる突端部分にあたり、
地面のずっと下のほうに水が流れているから、
土があまり冷えないそう。

さらに、春になる前の2~3月ごろ、フェーン現象で
八乙女山から井波におりてくる強い風も
畑の露を飛ばしてくれる、
よい気候条件のひとつなんだとか。

学者じゃないから詳しいことは
あまり分かりませんけどね、
と杉森さんは笑います。

今回、話を聞いて驚いたのは、杉森さんの里芋は
毎年続けて同じ畑では育てていないこと。

「毎年、別の畑に移動していき、
今年里芋を収穫している
この圃場(ほじょう)は
来年は水田になります。

1枚の広い畑の中で、1箇所でも病気が出てしまうと
もう里芋は作れなくなってしまうんです。

水田には浄化作用があるので、
里芋を育てるのは、5年に1回くらいの
サイクルで回していきますね。

わたしは8枚の圃場で回しています。

そういうことをずっと守っているのも
この土壌を保っている理由かもしれません」

そうして成長した里芋は、
来年の種芋になるもの以外は出荷用。
株をくずしたら、泥を落とします。

大きさごとに選別できるよう、
幅の異なる枠で組まれた円柱型の機械に
泥や根っこを落としてきれいになった
里芋を転がし入れると、
小さいもの、中くらいのもの、大きいもの、
とわかれて、ころころと出てきます。

こうして規格ごとに里芋は販売され、
各ご家庭の台所へ。

家庭で保存する場合に気をつけることも、
今回教えてもらいました。

「傷むのは、里芋にカビが生えるのではなく、
泥にカビが生えて、それが芋の中に入り込んでしまうんです。

まず泥をよく落としたら、
3日ほど、日当たりのいいところに置いてください。
表面が乾いたら、さらに泥がほろほろと取れるので
指の腹をつかって、取れるだけ泥を落とします」

泥付きのほうが新鮮さを保てると思うのは大間違い。
ただし、泥を取ろうと水で洗うのもダメとのこと。

乾かして泥を取ったら、紙の袋にくるんで
湿気や寒さがなるべくない場所へ。
ビニール袋は湿気をためてしまうので、これも厳禁。

保存場所としては、寒暖差がある場所はよくないので、
台所やベランダではなく、リビングなど
比較的、気温が一定の場所がいいそうです。

「テレビの後ろとかが、実は一番適してるんですよね。

昔は真空管だったんですが、
今のテレビは液晶で壁に設置する方もいるので
だんだんこれは言えなくなってますが」
と笑います。

きちんとした環境で保存すれば、
なんと、3月ごろまで大丈夫だそう。

また、皮をむいて、生のまま冷凍保存も可能です。
冷凍のまま、沸騰したお鍋に入れたら
おいしく食べられます。

元々の土壌の良さに、杉森さんの手間暇と
知恵がぎゅっとつまった里芋たち。

ぜひ一度、ご賞味ください。

季の実の実店舗と、オンラインショップで販売しています。

文:松倉奈弓
写真:大木賢

Privacy Settings
We use cookies to enhance your experience while using our website. If you are using our Services via a browser you can restrict, block or remove cookies through your web browser settings. We also use content and scripts from third parties that may use tracking technologies. You can selectively provide your consent below to allow such third party embeds. For complete information about the cookies we use, data we collect and how we process them, please check our Privacy Policy
Youtube
Consent to display content from Youtube
Vimeo
Consent to display content from Vimeo
Google Maps
Consent to display content from Google
Spotify
Consent to display content from Spotify
Sound Cloud
Consent to display content from Sound